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 秩父地方の主要産業の一つが、セメントである。

 戦前より周辺の山岳地帯でセメントが産出され、地元の産業を支えてきた。現在ではセメントの枯渇などによる閉山が相次ぎ、規模は縮小しているものの、秩父駅周辺ではいくつものセメント工場の姿を見ることができる。その多くは今は廃墟と化しており寂しい限りだが、一部の工場は現在でも稼動しており、今なお秩父地方における産業の一角を担っている。秩父のセメント産業はしばらく秩父セメントと呼ばれる会社が担ってきたが、昨今のセメント山閉山の煽りを受け、太平洋セメントに併合され現在に至っている。
セメントの輸送に関しては、現在は自動車によるものがほとんどであり、「ミキサー車」(正式名称は『トラックミキサ』)と呼ばれる、車体に回転可能な円筒形の容器(ドラム)を装備した自動車は街でよく見かけることができる。このミキサー車は、ドラムをゆっくりと回転させながら走っているが、これは攪拌することでセメントが固まるのを防止するためである。

 秩父地方とセメントに関して特筆すべきは、貨物列車による輸送である。この貨物輸送はJR八高線を利用して行われた。八高線は、群馬県の高崎駅から埼玉県西部を経由して、東京都の八王子駅に至る路線である。戦前より貨物輸送が盛んであり、戦時中も山間部、即ち敵に見つかりにくい地域を経由して東京都まで至る唯一の路線であることから軍事物資の輸送路線として重宝され、不要不急線となることはなかった。戦後は寄居駅を基点に東京・群馬両地域へセメントを運ぶための貨物輸送が盛んであった。ちなみに、八高線は首都圏を走る鉄道路線の中で唯一非電化車輌(ディーゼルカー)による貨物輸送が行われている路線として好事家に知られることとなった。しかし残念なことに、セメント産業の大幅な縮小を理由に、八高線を利用した貨物輸送も2005年に完全廃止されてしまった。ところで、近年の地球温暖化問題に対する世論の高まりを受け、その原因の一つとされる自動車による輸送が問題視されるに至っている。このことから一時は縮小・廃止の憂き目に遭った鉄道による貨物輸送が再び脚光を浴びつつある。したがって、八高線による貨物輸送もまた見直されることを期待したい。

 自然の豊かな秩父地方にあってまるで要塞のようなセメント工場は、ある種異質であると見る向きもあるかもしれない。しかしながら現在に至るまで秩父地方の産業の一角を担ってきたのはセメントであり、このことは看過することはできない。また、要塞のようなセメント工場も、当時の設計者達の努力により周囲の景観に十分耐えうる建築物として設計された。こうしたセメント工場を間近で眺めてみると、芸術的な美とはまた違う、ある種の建築美を感じることができる。最後に、将来秩父地方を訪れる際は是非セメントにも目を向けていただくこと期待して、この文の締めくくりとしたい。
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